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                                           2016.6.2

「職業大学」制度化に異議あり!!
〜教育プログラムの多彩化で十分に対応可〜


高等教育経営計画研究所  青野友太郎


  この5月30日の中教審答申で、「実践的な職業教育」を行う新「高等教育機関」(専門職業大学/専門職大学)が2019年度に制度化されることになりました。しかしながら、次の視点から、異議ありと直言します。

  1.何故に「新機関」の創設なのか?
  ・高校専門科・専門学校及び短大・大学における職業・実務教育の現状に関する点検・評価が
   不明である
  ・「専門職大学院」が制度化されて、既に12余年になるが、この点検・評価も不問のままである
  ・この新機関の具体的な制度設計〜「設置基準」は本当に構築可能なのかが大いに疑問で
   ある

  2.職業実践力育成プログラム(BP)認定制度で充分
  ・現在、大学・短大・大学院の教育課程は「教育プログラム」として、再構築中である
  ・2015年度にスタートした、本BP認定課程は、国・公・私立の学部・短大・大学院において
   122課程が発足している
  ・「新機関」ではなく、この「プログラム」で十二分に対応可

  3.「新機関」を制度化するならば、職業系は全て移行すべき
  ・「専門職」は、医師・看護師・社会福祉士・保育士等の厚労省の国家資格に係る職業が多い
  ・現在、大学の修了要件124単位、短大62単位の原則に、資格に要する授業科目が加重されて
   過密となっている
  ・しかしながら、「専門職」において、一般・教養教育は必須なものと言える。さあ、どうするか

  4.「実務家教員」とは何者か
  ・実務家教員も数年経れば、現在の実務にはうとくなる
  ・企業等での週2日程度の兼務を要する。又は2〜3年交代での出向体制をとる
  ・実務については、「コーオプ型教育」システムを本格的に導入する方が合理的である

  5.「新機関」制度化における他の疑問点
  ・「おおむね3〜4割以上は実習」という。「以上」は10割まで含む
  ・「おおむね4割以上は実務家教員」とは10割でも可となる
  ・いずれにしても「以上」は不見識である

  この5月30日の中教審答申で、「実践的な職業教育」を行う新「高等教育機関」が2019年度に制度化されることになりました。しかしながら、次の視点から、異議ありと直言します。
                                                         以上

  是非とも、読者各位のご感想・ご意見をお寄せ願います。本コーナーに掲載させていただきます。

  <ご感想・ご意見>

  ご無沙汰しています。本日のご意見、その通りだと思います。既存の大学等の高度職業人養成のどこに欠陥があったのかという総括なしに、新職業大学をつくるというのは納得できませんね。バックに何か圧力があったのでしょうか。(矢倉久泰氏)

  私もほぼ同感ですが、政策とは各種利害の妥協・調整のもとにアウトプットされるものと考えておりますので、論点は他にもさまざまなものがあることでしょう。いろいろな方と議論ができればと思います。(山本眞一氏)

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