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2018.4.20

2020年代高等教育10ブロック圏計画を拓く
〜学制150年を期に“地方分権・自治”への反転を〜


地域科学研究会 高等教育情報センター 代表
高等教育計画経営研究所 常任同人
  青野 友太郎



  現在、中教審大学分科会将来構想部会において、「概ね2040年頃の社会を見据えて」の「高等教育の将来構想」が審議されている。この6月頃の中間報告、秋を目途に答申とのこと。政策フレームとしては、「高等教育計画の策定と各種規制」の時代から、規制緩和・自由化の潮流の中で2004年度に大転換した「将来像の提言と誘導」の時代の継続となっている。05年1月の『将来像答申』は10年〜15年後を想定し、今次は22年後を見通しての将来像の提示である。しかしながら、今、まず求められるのは、この14年余の高等教育政策の点検と評価ではないだろうか。
 2004年度において、1)国立大学の法人化、2)株式会社立大学の発足、3)ロースクール等の専門職大学院の発足、4)設置認可の準則主義化と届出設置の導入、5)認証評価制度の導入等の“大学制度の根幹”に係る“大構造改革”がもたらしたものの検証が先行すべきと考える。そして、19年度発足する専門職大学(専門職学科)等や20年度大学入試改革シナリオが高等教育に及ぼす影響をどう予測していくのか……。
 さて、先の『将来像答申』では「第1章 新時代の高等教育と社会」においては、下記の現状認識が表明されている。

 3 高等教育と社会の双方向の関係:高等教育の危機は社会の危機(抄)  

しかし、高等教育が近年の社会の変化に真に対応できているのか、
  また、十分に高い質を保っているのかといった点については、大いに
  問題があると考えられる。各高等教育機関の個性・特色の相対化、
  各機関ごとの人材養成目的の曖昧化、教育機軽視の傾向、度重なる
  規制改革の中での「大学とは何か」という概念の希薄化、他の先進
  諸国に比べて必ずしも十分とは言えない高等教育の経済的基盤など、
  むしろ、我が国の高等教育は危機に瀕していると言っても
  過言ではない。

特に、人々の知的活動・創造力が最大の資源である我が国にとって、
  優れた人材の養成と科学技術の振興は今後の発展のための両輪として
  不可欠なものであり、この両者に占める高等教育の重要性にかんがみれば、
  高等教育の危機は社会の危機でもある。


 この「我が国の高等教育は危機に瀕している」そして「高等教育の危機は社会の危機である」との現実は、残念ながら、2018年段階において、さらに深まっているといえる。この40年余の高等教育政策を振り返った時、「概ね2040年頃の社会を見据えて」の「将来構想」による「政策誘導」では、情況に対峙しえないと考える。
 振り返れば、1971年の中教審答申において、高等教育の全体規模、地域的配置などの長期見通しに立った国としての計画策定の必要性が指摘された。そこで、76年度から97年度まで、計画期間5年間、6年間、6年間、8年間、5年間で5次にわたり、2004年度までの「高等教育計画」が策定されている。そこでは、18歳人口の増減、進学率の増加等を踏まえ、全体規模を想定した上で、地域別配置・分野別整備の新増設の抑制等がとられた。76年度〜86年度は全国8ブロック、86年度〜92年度は全国13ブロックでの整備目途を示している。そして、05年1月に05年度から20年度頃の「高等教育の将来像」が提示されたのである。

◇2020年代高等教育10ブロック圏計画の基本フレーム
・将来“構想”ではなく、“高等教育計画”とし、ブロック圏(10)、都道府県圏(47)
 及び市町村圏(100程度)の3層構造で策定される。
・1872(明治5)年8月の「学制」は、全国8大学区構想(1大学区/32中学区/
 210小学区)として、大学校8校、中学校256校、小学校53,760校が
 設置プランされ、近代国家への中央集権化の教育インフラ整備が図られた。
・明治維新より150年余りを経て、日本社会の活力“元気”を快復するためには、
 “地方分権・地方自治”に反転することが肝要である。
・各道州は、海外の200余の国・地域との国際交流及び国内の
 他の9ブロック圏との連携により、新たな“協働と共生”の
 パラダイムを切り拓くことが出来る。
・2023年には「学制150周年」の節目を迎える。道州制のフロントランナーとして、
 教育インフラを“高等教育10ブロック圏計画“として再構築する。
・日本社会は、超少子・高齢化、成熟化の中で、グローカルな“生涯学習社会”に
 既にシフトしている。また、ICT・AI進化により、知の集積・生産・流通は
 “新・高等教育”へのパラダイム転換期を迎えている。

 いささか独断の論展となり、誠に恐縮であります。近年、中教審・各分科会・各部会等を傍聴しながら、率直に言って「審議会等のスタイル」について、イノベーションを要すると考えます。
 また、有識者及び関係団体の智恵・提言とともに、独立的なシンクタンクからの政策提言が、今ほど求められている時季はありません。下記の政策直言を高覧いただけましたら幸いです。


1.高等教育計画経営研究所の政策直言とは〜政策立案と法制化の新たな実現シナリオへ

2.高等教育計画経営研究所の創設メッセージ及び設立企画書


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