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令和元年9月26日

学校法人資産の運用を考える(4)
『不確実性が伴う資産運用と、確実性が求められる法人事業とのバランス』


粟津 久乃氏 写真
粟津 久乃
インディペンデント・フィデュシャリー(株)
マネージングディレクター



 リーマンショックが起きる直前の2008年9月15日、株価があれほど乱高下して、下げ続けるとは誰が予想したでしょうか。その当時、米国をはじめ世界的にも金利が上昇基調を続けた後、一転して、急低下をはじめるとは誰が予想したでしょうか? 未だに、当時の新聞の内容を記憶していますが、直前の報道でも、予兆も感じられる報道はなかったのが記憶にあります。
 そして現在の米国の金利動向についてでさえ、1年前までは、上昇傾向だと報道されていましたが、直近のFOMCの決断は利下げでした。これからの数年間、株価はどう動くのでしょうか?金利はどう動くのでしょうか?
 それは神のみぞ知る世界であり、どんな運用/金融のプロであっても、何人も将来を的中させ続けることはできないのではないでしょうか?まず、人間の予想や期待など裏切り続けられることが、資産運用の世界における常識だと考える必要があると思います。

 しかし、現実、学校法人においては、資産運用の成果を予算化して、事業計画や決算を見据えて、それらを達成してゆくことを求められる状況があります。
 1)将来がわからない、不確実性を伴う資産運用
 2)確実性が求められる学校法人運営
 という相矛盾する2つの事象をバランスさせる(あるいは妥協点を、落としどころを探る)ことが学校法人の資産運用の命題だと思います。

 そのために、一番に考えなくてはならないことは何でしょうか? 学校法人の資産運用の出発点から、不確実性の高い要素に依存してしまうと、結果として、学校法人の事業や決算の不確実性が高まるのは自明であります。だとすれば、資産運用の出発点においての不確実性を(ゼロにはできませんが)、極力、軽減することを心掛けながら行えば、事業・決算の不確実性も抑制できることは、すぐに理解できるかと思います。

 資産運用を構築していく2大要素として、
 1)個別銘柄・偏った業種/資産になってはいないでしょうか? 
  ⇔幅広い分散投資になっているでしょうか?
   (具体的には世界の金融市場への分散投資になっているでしょうか?) 
 2)キャピタルゲイン・資産価値の結果次第に依存してないでしょうか?
  ⇔特に、インカム収入は本源的に安定して受け取れるものであるでしょうか?
   (元本を取り崩す、特別配当の投資信託などは将来的に安定的とは言い難く、意味を成しません。)

 この2つの切り口で、学校法人の資産をチェックしてみてください。1)のような個別銘柄・偏った業種/資産えであるほど、2)のようなキャピタルゲイン・資産価値の如何に依存しているほど、資産運用の結果の不確実性も高まることは常識を働かせれば、すぐに判ると思います。

 ですので、弊社の著書『新しい公益法人・一般法人の資産運用』での運用事例でも紹介しておりますが、仕組債など、為替や株価などの価格変動を「利息」に転化しているに過ぎない金融商品に傾倒したり、個別銘柄での債券、REIT、株式、外債などの運用に依存しすぎたりする「旧来型の資産運用」では、アウトプットとしての事業や決算が比較的に大きな不確実性を帯びてしまうのでは当然でしょう。

 消去法的な選択かもしれませんが、残るのは、
 1)幅広い分散投資
 2)金融市場から生み出される利子配当のみを主たる源泉としたインカム収入
 という両方の要素をクリアして構築された資産運用スタイルなのではないでしょうか。

 不確実性が必然的に伴う資産運用と、確実性が求められる学校法人事業という相矛盾する2つの事象を辛うじてバランスさせるのは、このような資産運用スタイルしか今のところ、見当たらないのです。
 現在の世界各国の金融緩和、金利低下の中で、今より、さらに外国為替や株式が大きく下落したり、景気後退で信用リスクなどが起きたとき、結果として、事業や決算にも深刻な影響が起こりうると薄々気づいていらっしゃる学校法人がございましたら、是非、一度、弊社の『新しい公益法人・一般法人の資産運用』をお手に取ってみてください。
 資産運用による年間収入の安定化と、保有資産の長期的な元本の保全とに向けたヒントを見つけていただけることと思います。

つづく


□ 学校法人資産の運用を考える(3)
  『現在の法人事業、将来の法人事業についての考察』

□ 学校法人資産の運用を考える(2)
  『内部人材の問題についての考察』

□ 学校法人資産の運用を考える(1)
  『法人の資産運用の二極化』の真相

◇ 学校・財団法人の為の資産運用入門書
  『新しい公益法人・一般法人の資産運用』
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